池の畔で

『池の畔で』

 近所の小さな公園に池があり、時おり太公望の末裔が釣り糸をたらす姿も見られる。魚がかかったのは見た事がないのだが、きょうも老若数人が、ようよう温み始めた池の淀んだ水面をさして真剣そうでもなく茫洋と見つめている。餌や針をつけずの究極の遊びをしているのではないかと思われる程、釣れない。まったく釣れない。浮子はピクリともしない。

 道具を抱えてやって来た青年が末裔に参入する。慣れない手元で仕掛けを用意する。

 いい道具だね/初めて釣りするんですけど、そうですか。これお爺さんにもらったんです/この仕掛け巻きなど職人が作ったものだろうね、大事にしたらいいよ/そうですね/釣れるといいね、グッドラック